名古屋地方裁判所 昭和46年(わ)208号 判決 1971年11月22日
本籍
名古屋市中村区大宮町二丁目五八番地
住居
右同所
医師
堀好二
明治四四年三月三〇日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について当裁判所は検察官馬場義宣出席のうえ審理を遂げ次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役四月および罰金三〇〇万円に処する。
被告人において右罰金を完納できないときは金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から一年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、名古屋市中村区大宮町二丁目五八番地において、堀産婦人科の名称で産婦人科医院を経営する者であるが、被告人に対する所得税を免れる目的で、自由診療収入、雑収入の一部を除外する等して簿外預金等を蓄積する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ、
第一、 昭和四二年分における被告人の実際所得金額が一八、五八〇、七八〇円あつたのにかかわらず、昭和四三年三月一五日名古屋市中村区牧野町六の三所在の所轄名古屋中村税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五、一六四、五七二円であり、これに対する所得税額が一、四〇一、五〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告人の昭和四二年分の正規の所得税額八、四四九、六〇〇円と右申告税額との差額七、〇四八、一〇〇円をほ脱し
第二、 昭和四三年分における被告人の実際所得金額が二〇、八八一、四四二円あつたのにかかわらず、昭和四四年三月一五日前記名古屋中村税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五、九九〇、六九八円であり、これに対する所得税額が一、七八三、七〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告人の昭和四三年分の正規の所得税額九、七五一、四〇〇円と右申告税額との差額七、九六七、七〇〇円をほ脱し
たものである。
(証拠の標目)
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の各検察官に対する供述調書
一、被告人外一名作成の昭和四五年一月二〇日付上申書
一、被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、被告人作成の各上申書
一、大蔵事務官山内義憲作成の告発書
一、大蔵事務官小村武作成の各証明書
一、大蔵事務官山内義憲作成の各脱税額計算書
一、高木治郎、安達孝、山岡衛、山田陽三、堀好博、井桁斉、正者岸男、坂井田正巳、堀のぶ作成の各上申書
一、大蔵事務官中村孝一作成の現金、有価証券現在高確認書および印鑑現在確認書
一、東海銀行中村支店、富士銀行柳橋支店、住友信託銀行名古屋駅前支店、中央信託銀行名古屋駅前支店、三井信託銀行名古屋支店、三菱信託銀行名古屋駅前支店、住友信託銀行名古屋支店、安田信託銀行名古屋支店、中央信託銀行名古屋支店、三菱信託銀行名古屋支店、三井信託銀行栄町支店、安田信託銀行名古屋駅前支店作成の各銀行預金証明書
一、大蔵事務官中村孝一作成の調査報告書
一、愛知県医師会、愛知県産婦人科医会、愛知県国民健康保険団体連合会、名古屋トヨペツト中村営業所作成の各証明書
一、証人堀修一郎、同久野有史の当公判廷における各供述
一、押収してある
堀産婦人科総勘定元帳 (昭和四二年度) (昭和四六年押第二〇二号の一)
総勘定元帳 (昭和四三年度) (同押号の二)
銀行勘定帳 (自昭和三六年至昭和四二年) (同押号の三)
銀行帳 (昭和四三年度) (同押号の四)
金銭出納帳 (昭和四二年度) (同押号の五)
右同 (昭和四三年度) (同押号の六)
仕入帳 (昭和四二年度) (同押号の七)
同 (昭和四三年度) (同押号の八)
入出金振替伝票 (昭和四二年) (同押号の九)
右同 (右同) (同押号の一〇)
右同 (昭和四三年) (同押号の一一)
仕入証ひよう 一綴 (同押号の一二)
経費領収書綴 (同押号の一三)
税務関係雑書類一綴 (同押号の十四)
手帳 (同押号の一五)
雑書類綴 (同押号の一六)
ノート(謄写用) (同押号の一七)
自由診療報酬計算書等 (同押号の一八ないし四二)
(法令の適用)
一、判示事実につき 各所得税法第二三八条第一項
一、(刑種の選択) 所定刑中懲役刑罰金刑を併科
一、(併合加重・刑の併科) 刑法第四五条前段、第四七条、第一〇条(重い判示第二の罪の刑に加重)、第四八条
一、(労役場の留置) 同法第一八条
一、(刑の執行猶予) 同法第二五条第一項
一、(訴訟費用) 刑事訴訟法第一八一条第一項本文
(裁判官 辻下文雄)